2015年10月05日

【公演評】「吉田都×堀内元 Ballet for the Future」〜バレエ芸術の「伝承」をコンセプトに密度の濃いプログラムを披露、夢のような一夜が繰り広げられた!

 このまま終わってほしくない、永遠に続いてほしい――。切にそう思った。英国ロイヤル・バレエ団ほかで活躍した吉田都(特別ゲスト)とニューヨーク・シティ・バレエ出身の堀内元(芸術監督)という、英米最高峰のバレエ団のプリンシパル(最高位)に上りつめた破格の大スターが共演した「吉田都×堀内元 Ballet for the Future」は、至福のひととき、夢のような一夜だった(8月27日 東京・ゆうぽうとホール)。

次代を担う踊り手たち、そして観客をも巻き込んだ熱が、
日本のバレエの未来を光り輝かせていくに違いない。

 吉田と堀内が合いまみえたのは二部構成の後半に披露された『La Vie』(振付:堀内元 音楽:クロード・ボリング 2013年初演)。

 4つのパートで構成されておりクラシック音楽にジャジーな響きが掛け合わさった音楽にのせて繰り広げられる。振付はクラシック・バレエのボキャブラリーにセンス良くひねりを加えた洒脱な味わい。群舞やデュエットが目くるめくように展開されるが、緩急自在な音楽と分かち難く結び付いており、観ていて心地よく胸が弾む。吉田の軽やかなで余裕のある足さばきや堀内の驚異的な切れ味が圧巻のピルエット(回転)など達人技がめじろ押しなのだが、それを巧まず、優美に、そしてダイナミックに踊るのが素晴らしい。飯島望未、岡田兼宜ら共演者たちの精気に満ち満ちた踊りも感動的だった。

 この粋(いき)な芸術性は前半の第1部でも貫かれる。最初の『Valse Fantaisie』は堀内の師で20世紀を代表する振付家ジョージ・バランシンが1967年に振り付けた作品であり、飯島、末原雅広ら男女6人が息をつく間もなく華麗にステップを繰り出していく。堀内の原点を示すという意味でも幕開けにふさわしかった。『Attitude』(音楽:ニコ・マーリー 2015年初演)は堀内が女性4人のソロと群舞を巧みに組み合せて振り付けたもので奔放なダンスが楽しい。『Le Reve』(2009年初演)は堀内が盟友のジョー・モッラに音楽を委嘱し自ら振り付けた佳作だ。森ティファニーと岡田を中心に、白の簡素な衣裳を着たダンサーたちが、起伏に富んだ音楽に身を委ねるように踊る。『Pandora's Box』(2014年初演)はセントルイス・バレエの主席客員振付家クリストファー・ダンボアの振付。荒井茜と上村崇人がフランツ・シューベルトの「ピアノ三重奏曲第2番」変ホ長調第2楽章とともに踊る官能的なダンスはスリリングだった。

 第1部最後に上演された『ドン・キホーテ〜第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ〜』は、この晩唯一の古典作品だったが、主演のキトリとバジルが踊るアントレ(入場の踊り)の振付は堀内によるもの。小粋にステップを披露したのは加治屋百合子&ジャレッド・マシューズ(ともにヒューストン・バレエ)というアメリカで活躍している気鋭のカップルであり、舞台に一段と華やいだ雰囲気を醸し出していた。

 アメリカ・バレエのスタイルで統一した密度の濃いプログラム、完成度の高い仕上がりに圧倒されたが、本公演の真価は「伝承」というコンセプトにあろう。国内外で活躍する若い意欲に満ちたダンサーたち、そして加治屋とマシューズが、世界の第一線で活躍してきた堀内と吉田のもとに集い、大勢の熱心なバレエ・ファンに見守られながらバレエ芸術に不可欠な伝承・継承を受けた。次代を担う踊り手たち、そして観客をも巻き込んだ熱が、日本のバレエの未来を光り輝かせていくに違いない。そう強く確信した。
 なお東京公演の主催はバレエ・ダンス用品の総合メーカー、チャコット株式会社と株式会社イープラス。公演のみならず講習会やトークイベントの開催を通して堀内の意図したコンセプトの周知を図った。従来のバレエ公演の枠を超えた挑戦を今後も期待したい。また東京に先立ち金沢公演も行われ盛況だったことも特筆される(主催:一般財団法人北國新聞文化センター、チャコット株式会社 共催:北國新聞社)。

[文/高橋森彦(舞踊評論家)]
[写真/瀬戸秀美]

公演概要

吉田都×堀内元 Ballet for the Future

<公演日・会場>
2015/8/25(火) 本多の森ホール (石川県)
2015/8/27(木) ゆうぽうとホール (東京都)

<キャスト>
詳細は、キャスト表をご参照ください。

2015-10-05 21:18 この記事だけ表示