2015年07月17日

熊川哲也オーチャードホール芸術監督 presents「オーチャード・バレエ・ガラ〜JAPANESE DANCERS〜」記者懇談会レポート!

 熊川哲也は1999年にKバレエ カンパニーを設立しバレエシーンをリードし続ける。2012年1月、Bunkamuraオーチャードホール芸術監督に就任後、同劇場で『シンデレラ』『ラ・バヤデール』を新制作し、監修を務めた「オーチャードホール25周年ガラ〜伝説の一夜〜」も大成功に導いた。2015年8月、熊川が総合監修を務め、オーチャードホールの舞台に放つのが世界で活躍する日本人ダンサーに焦点を当てた「オーチャード・バレエ・ガラ〜JAPANESE DANCERS〜」。7月上旬、熊川が記者たちを前に公演への思いを語った!

記者懇談会レポート

 昨今、国際バレエコンクールでの日本人受賞が大きく報道される。しかし、西洋発祥というハンディを克服し欧米のバレエ団で活躍する日本人が少なくないことは思いのほか知られていない感もある。今回そのなかから熊川が厳選した俊英が集結。倉永美沙、平野亮一、崔由姫、平田桃子、橋本清香、金子扶生をはじめ多士済々だ。企画意図をこう話す。 「日本人って、どうしても外国への憧れとか、海の向こうのものは素晴らしいみたいな固定観念がありますよね?いまや日本人とか外国人とか(区別の)ないボーダーレスな時代に突入していると思います。グローバルスタンダード以上のダンサーが出てきていますから、この日本の地において披露しブレイクスルーさせたい」

 日本には欧米の有名バレエ団が訪れ、海外スター中心のガラ公演も活発。そのなかで「日本人のアイデンティティを求めたい」というのが熊川のこだわりだ。

 「What is your nationality ? WBCやワールドカップなどでは皆こぞって「JAPAN!JAPAN!」となる。だけど劇場に来るのは…。日本人の根深い所にあるナショナリズムに食い込みたい、一石を投じたいという気持ちがある。これだけ凄い才能が日本にいるので応援していただきたい。自分はローザンヌ国際バレエコンクール(1989年)でゴールド・メダルを獲って注目されましたが、僕はワン・オブ・ゼムなのにフィーチャーされる時代でしたね。でも今はもはやボーダーがない時代ですから、どうやって主張していくのか―。日本の若き才能が紹介され、それを応援するピュアなバレエファンがいてもいいと思います」

 プログラムも魅力的だ。「僕がやるからには一ひねりも二ひねりもしないとね。」と自負するだけに熊川のセンスが光る。巨匠ウィリアム・フォーサイスの『精密の不安定なスリル』は世界初オール日本人キャストでの上演となる。ロイヤル・バレエのダンサーたちはケネス・マクミラン、リアム・スカーレットという新旧のロイヤルを代表する振付家の作品を披露。ルーマニア国立バレエの3名は芸術監督ヨハン・コボーの振付でヴァイオリン生演奏にのせて超絶技巧を軽やかに繰り広げる『レ・リュタン』を踊る。

 「1つの作品を皆で協力して作ってもらうとか、新作を出すとか、その国のカラーがある作品を出す。フォーサイスの作品をオーストリア、カナダ、アメリカで活躍しているダンサーが集まって踊る。短時間で創り上げていくのはプロがなせる技であって、そこに完成度の高さを求めるのも面白い」

 未来のバレエを担う青少年にとっても見逃せない機会となりそうだ。

 「バレエを習っている少年少女たちには今回の公演に出演するダンサーだったり、僕だったりといったケーススタディが必要。ドイツに行けばフォーサイスをやりたいなとか、ロイヤル・バレエに行けばマクミランを踊ってみたいなとか憧れを持ったダンサーたちが、同じ国で育った先輩の踊るのを観て将来設計ができる」

 日本は多くの優れたダンサーを輩出するものの活躍の場は海外中心となるギャップがしばしば指摘される。しかしながらKバレエ カンパニーのようなプロフェッショナルなバレエ団も増え環境は改善されつつある。熊川は出演者に対しても「日本の劇場で、これだけの公演があり、プロのバレエ団として活躍できる場所があるということを分かってほしい」と話す。今回、彼らに先輩としてアドバイスできることは何かと問うと―。

 「助言は全くしないしリハーサルに出しゃばって教えることもしません。ただ同じ空気を吸うということに意味があるとは思います。バックアップする立場として接したい。オーチャードホールでこういったガラが催され、多くのメディアの方が興味を示し応援してくださる。あとは最高のパフォーマンスをしてくれればいい。お客様にオーチャードホールに集まってほしい。Bunbkamuraの親会社・東京急行電鉄株式会社はじめ様々な企業にもお力添えをいただき協力体制ができていますから幸せな環境を作れていると思います。」

 物語のある全幕バレエとは違う今回のガラの見方を問われ、こうアピールした。

 「たとえば一枚のキャンバスを前に「こういう見方をしたら楽しいよ?」とは言えないですよね。何を感じるかはその人次第。自分の発想がどこに伸びていくかというのは自然な化学反応でしかないんです。言えるのは何を表現したいのかを身体で表現する裸舞台だということ。最高の芸術である人間の身体がどう動くのかが一番のみどころです」

[取材・文=高橋森彦(舞踊評論家)]
[撮影=野澤敏昭]

公演概要

熊川哲也オーチャードホール芸術監督 presents
「オーチャード・バレエ・ガラ〜JAPANESE DANCERS〜」

<公演日・会場>
2015/8/1(土)〜8/2(日) Bunkamura オーチャードホール (東京都)

<出演>
崔由姫(ロイヤル・バレエ ファースト・ソリスト)
平野亮一(ロイヤル・バレエ ファースト・ソリスト)*2日のみの出演
金子扶生(ロイヤル・バレエ ソリスト)*2日のみの出演
橋本清香、木本全優(ウィーン国立バレエ ソリスト)
倉永美沙(ボストン・バレエ プリンシパル)
平田桃子(バーミンガム・ロイヤル・バレエ)*1日のみの出演
飯島望未(ヒューストン・バレエ ソリスト)
三野洋祐(ロイヤル・ウィニペグ・バレエ ソリスト)
椿井愛実(ロイヤル・ウィニペグ・バレエ アーティスト)
猿橋賢(イングリッシュ・ナショナル・バレエ ファースト・アーティスト)
松井学郎(ノルウェー国立バレエ プリンシパル)
野村千尋(ノルウェー国立バレエ アーティスト)
奥野凜、堀内尚平、吉田周平(ルーマニア国立バレエ ファースト・ソリスト)
杉野慧(Kバレエ カンパニー ファースト・アーティスト)
山本雅也(Kバレエ カンパニー アーティスト)
金原里奈(2015年ローザンヌ国際バレエ・コンクール受賞)

ヴァイオリン:成田達輝
ソプラノ:坂井田真実子 *1日のみの出演
オルガン伴奏:石井里乃 *1日のみの出演

ほか

※熊川哲也は総合監修となり、作品に出演いたしません。
※公演は8月1日、2日とそれぞれ一部演目が変更になる可能性がございます。
※出演者・演目は2015年6月25日現在のものです。出演者の病気や怪我等、やむを得ない事情で変更となる場合がございます。

2015-07-17 15:26 この記事だけ表示