2015年05月29日

金森穣、新シリーズ開始に向けて大いに語る!Noism1が2015年6〜7月、近代童話劇シリーズvol.1『箱入り娘』を上演!!

 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館の劇場付き舞踊団Noism(ノイズム)が意欲的に活動を展開中。2015年6月〜7月、メインカンパニーNoism1が、りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館、KAAT神奈川芸術劇場、金沢21世紀美術館にて近代童話劇シリーズvol.1『箱入り娘』を上演する。芸術監督で演出・振付を手がける金森穣に意気込みを聞いた!

 

金森穣インタビュー

――昨年(2014年)Noism創設10周年を迎え劇的舞踊『カルメン』を発表されました。続く『ASU〜不可視への献身』も新境地を拓く新作でした。精力的に創作されていますね。

 劇的舞踊『カルメン』はメリメ原作の物語に寄り添いエンターテインメント性があって自分の中の振り子の片側を押し広げた作品です。もう片方の振り子の中にある抽象的なものや微細な身体感覚に対する渇望をお見せしたのが『ASU〜不可視への献身』でした。さらなる10年を目指した時に、我々が養っていかなければいけないもの、失ってはいけないものを出したんです。舞踊って、身体を用いてやることにおいて動物的・野性的で論理化・数式化できない感覚や感性もある。それを研ぎ澄ますために日々トレーニングを続けていますが、訓練の回数や形だけに没頭しすぎると、慣性の法則で動物的な直感が削がれていく…。『ASU〜不可視への献身』を創作したことによって、皆もトレーニングを通して日々自分達の身体と向き合っていたし、自分も身体の内側の原初的な部分、物理的な部分に気付きました。

――最新作となる近代童話劇シリーズvol.1『箱入り娘』は、ベラ・バルトークが作曲しベラ・バラージュが台本を書いた「かかし王子」が原作です。創ろうと思われた動機は?

 4年前(2011年) 「サイトウ・キネン・フェスティバル 松本」で『青ひげ公の城』(オペラ)『中国の不思議な役人』(バレエ)を演出・振付した際、バルトークの音楽とバラージュの台本に出会いました。その後すぐにオリジナルの台本を書き上げました。Noism版の台本は童話風です。西洋の童話はもともと、ことごとくダークだし、子どものためというよりも大人の童心のために書いている。「かかし王子」という物語も相当怖いですよ。それに童話劇という自分にとって新しいことがやりたかったんです。「童話」や「童心」をキーワードとして普遍的に共有可能なものを、舞台芸術として形にするのもありなのかなと。台本を書き上げてからしばらく温存していましたが、今のNoismメンバーでこの作品を作りたいと思いました。彼らとなら今の自分の社会に対する感覚で、もっと踏みこんで近現代社会に対する批判ができるとも思いました。原作からは大分飛躍してますが、とくに最後の1割で大きく変えています。


――原作の王女は「箱入り娘」、王子は「無職のゲイジツカ」として登場するそうですね。

 ニートです(笑)。現代の民主主義社会において王女や王子という貴族を比喩的にとらえたら、市民生活を知らない娘ならば「箱入り娘」という比喩が値するし、財力も地位もあり親が金持ちで無学・無収入でも生きていけるというのはニートです。そして原作の「気の弱い男と気の強い女」というのも現代社会に対するリアルな風刺になる。とはいえNoism版の台本では魔女になっていますけれど妖精が「この瞬間に魔法をかける」とか、楽譜に指示されている音楽的構造は限りなく忠実に拾っています。それでいて我々なりの解釈と登場人物を加味しました。でも原作のようには終われないです。「めでたし、めでたし」な訳がない(笑)。そこにこの作品の問題意識が表れるんです。新潟では「水と土の芸術祭2015」の参加作品として、小学生限定公演や65歳以上の方のための公演もあるので反応が楽しみですね。


――近代童話劇シリーズと銘打たれていますが金森さんにおける「近代」の認識とは?

 今Noismに所属しているメンバーの中でも、特に若手の感覚でいえば現代って21世紀なんです。戦後高度経済成長期やバブルは彼らにすると近代。「昔の出来事だけど、そこから今があるということ」を浮き彫りにしたいし、時代は変わっても変わらない愚かな人間性を通して今置かれている我々の状況を俯瞰して眺めたい。「同時代のコンテンポラリーなことをやります」という消費サイクルに入るのではなくて、そこから一歩離れた所から今を眺めたい。Noism2(研修生カンパニー)の子たちは全員平成生まれですが自分と全然価値観が違うし何を考えているか分からないこともある。でもそれが面白いんだよね。彼らの感性と置かれている社会に対する感覚に興味がある。自分の感性だけだったら、どんどん年を取っていくばかりじゃない?今生きている人たちに届けたいと思ったら、そこを無視できない。


――金森さんの作風はその時々変化しますが、常にプリミティブな身体性を大切にされていると思います。その対極としてバーチャルな情報社会に対する不信感を感じるのですが。

 今回は映像の世界をバーチャルなもののシンボルに置きます。「無職のゲイジツカ」もそうですが、今は動画投稿サイトなどで自分の表現をどこでも自由に世界に発信できるし、受信できる。しかし、視覚情報が増えていくほど「観ている」よりも「観られている」という意識が潜在的に増え、臨界点を超えると監視社会みたいになる。視覚情報に対して敏感に反応するのは、お客さんに何を見せるか、何が見えているか、どう見せるかを可視化するのが我々がやっている舞台芸術の本質であることと繋がっている。「かかし王子」の脚本家であるバラージュが物語の根幹として、作品と作家の乖離性、その苦悩を言うけれど今は真逆でしょ?匿名で投稿して、自分の所在を明らかにしなくても作品が評価されればいい、というより所在は消したい訳だから。仮想空間の自分ができるだけ多くの「いいね!」を取るとか、できるだけ多くの視聴回数を得るとかが最大の目標になっている。


――地元・新潟で初演し近年定期的に公演するKAAT神奈川芸術劇場と、今回は金沢でも上演されます。

 関東圏ではKAATでの公演が定着してきていますね。劇場の雰囲気や舞台機構もいい。年に1回は共同制作しています。今後はもっと踏みこんで3か月くらい皆で横浜に住んでKAATでものを創れればいいなと思います。


――最後に『箱入り娘』のアピールをお願いします。

 今回はクダラナイ作品です(笑)。「どれだけクダラナイことを通して重要なことを語れるか」がポイントです。「クッダラナイナ〜」と笑って観ながら、その奥の闇を感じていただけると本望ですね。「NHKバレエの饗宴2015」で上演した『supernova』をテレビで観て、初めて劇場でNoismをご覧になる方は目が点になるかもしれません(笑)。身体の質は突き詰めます。ハイクオリティな身体で、これだけクダラナイことをやるのかと。そこを楽しんでいただきたいですね。


[取材・文=高橋森彦]
[撮影=坂野則幸]

公演概要

近代童話劇シリーズvol.1 『箱入り娘』

<公演日・会場>
2015/6/6(土)〜8/1(土) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 スタジオB (新潟県)
2015/6/22(月)〜6/28(日) KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ (神奈川県)
2015/7/18(土)〜7/19(日) 金沢21世紀美術館 シアター21(石川県)

演出振付:金森穣
音楽:B.バルトーク〈かかし王子〉
衣裳:堂本教子
映像:遠藤龍
出演:Noism1

2015-05-29 16:35 この記事だけ表示