2014年06月17日

熊川哲也が総合監修のBunkamura 25周年記念特別企画 「オーチャードホール25周年ガラ〜伝説の一夜〜」記者発表会レポート

 東京・渋谷の地にそびえるBunkamura。オーチャードホールとシアターコクーン、2つの劇場及び映画館、美術館、ギャラリーを備え、最新の文化芸術を発信してきたこの複合施設は、今年誕生から25周年を迎える。クラシック音楽、オペラ、バレエのためのホールであるオーチャードホールは、1989年9月3日、門外不出とされていたバイロイト音楽祭「タンホイザー」の来日公演でこけら落とし。2012年からは、日本が世界に誇るバレエ演出家・振付家・ダンサーの熊川哲也が芸術監督を務めている。25周年を迎える今年9月3、4日、熊川が総合監修を務める「オーチャードホール25周年ガラ〜伝説の一夜〜」が催されることになり、その記者発表会が行われた

 

記者発表会レポート

(左より)吉田都、熊川哲也、広上淳一

 数々のバレエの名プロダクションの演出・振付を手がけてきた熊川にとっても、クラシック、オペラ、バレエを融合させるガラ公演を手がけるのは初めての試み。広上淳一が指揮にあたり、バレエ界からは吉田都、堀内元、中村かおり、海外で活躍する日本人若手ダンサー、Kバレエ カンパニー、Kバレエ スクール、クラシック界からは森麻季、幸田浩子、錦織健、東京フィルハーモニー交響楽団、二期会合唱団、藤原歌劇団合唱部らが参加。こけら落としを飾ったワーグナー「タンホイザー」から合唱や新振付作品が披露され、ヴェルディ「リゴレット」や「椿姫」のアリア、熊川振付作品が並ぶなど、盛りだくさんのプログラム。吉田と熊川が、7年ぶりの共演作に、二人にとって初挑戦となるローラン・プティ振付「アルルの女」を選んだことにも注目が集まる。東急グループのかつての総帥、五島昇は開場前、オーチャードホールのコンセプトについて、「世界の至高の芸術と洗練されたお客様の融和の場を渋谷に作る」と語っていたそうで、「今回のガラ公演の内容はそのコンセプトにマッチする」とは、東急文化村代表取締役社長・升田高寛の弁。

 「オペラ、バレエ、オーケストラの3つの軸をメインに、過去・現在・未来の時空を超えての融合が今回のコンセプト。個人的にうれしいのは、20世紀、21世紀を代表するバレリーナの一人である吉田都さんと7年ぶりに舞台で化学反応を起こせること。期待をふくらませてその日を心待ちにしていただけたらと思います」と熊川芸術監督。「オーチャードホールが10周年を迎えたとき、その記念公演で、ローラン・プティがホールと僕のために振り付けた『ボレロ』を踊ったことが、心の中に思い出としてある。英国に住んでいた頃も日本に帰ってくるたび、アーティストをあたたかく迎え入れてくれる居心地のよい劇場、自分のホームと感じてきたので、3年前に芸術監督の話があったとき、素直に受けた。ウエストエンドにもブロードウェイにも言えることだが、渋谷という立地は、ポップ・カルチャーとハイ・カルチャーとが融合する場所。その意味でも他に類を見ないすばらしい劇場であると思う」と、オーチャードホールの魅力を語る。

 今回のプログラムについては、「これからの日本の子供たちの成長をも見据え、日本の観客の感性の高さをも再確認するものでありたい。僕自身、クラシック・バレエ、クラシック音楽に出会わなければ、豊かな精神性は生まれなかった。昨今、テレビからの視聴者離れが言われているが、それもハイ・カルチャーを求めていることの表れなのではないかと思う。バレエについても、海外から連れてきたダンサーが古典バレエのパ・ド・ドゥを踊るというような、よくありがちなガラ公演にはしたくなかった。日本のバレエ界の中にも一流のダンサーが何人かいるが、その中から、バランシン最後の弟子と言われた堀内元さんと、中村かおりさん、なかなか日本で紹介される機会のなかった二人を、自分としてはぜひ紹介したいと考えた。英国ロイヤル・バレエ・スクール出身である都さんと僕、スクール・オブ・アメリカン・バレエ出身である堀内さんと中村さん、4人が絡み、融合する場も素敵だなと考えている。僕の振り付けた『シンプル・シンフォニー』で、海外で活躍している日本人の若手ダンサーたちを紹介できるのもとてもいい機会」と述べ、熊川自身が芸術監督、演出・振付家として日本の舞台芸術界の未来を見据えた上で練り上げた、その思考が具現化されたものであることがうかがえる。「僕は一流という言葉が大好きで、そうあるべきだと常に襟を正している。一流の仲間入りをし、そこについていきたい」との言葉も飛び出し、芸術監督・熊川哲也節はこの日も絶好調だった。

 その熊川と7年ぶりに共演するとのニュースが話題を呼んだ吉田都は、「英国で踊ってきた後、Kバレエ カンパニーをはじめとするさまざまなバレエ団の公演、また個人での公演など、オーチャードホールにたびたび立たせていただいた。今回このような特別な機会を与えていただき、ここまでオペラとバレエと音楽とが融合したエキサイティングな公演はなかなかないので、私自身とても楽しみにしています」と挨拶。今回、「アルルの女」でプティ作品初挑戦となるが、「古典バレエ中心に踊ってきて、私にとっても勉強になる。私のタイプではない振付家であり、作品なので、非常にチャレンジに感じているが、熊川さんと二人、これまで慣れ親しんできたものではない踊りを踊るということで、スペシャルな化学反応が生まれるのではないかと思う」と意気込みを述べた。
「日本を代表するお二人、そして歌手の方々と25周年を祝えることがとても光栄。娘が生まれたときに本番をやっていたのも、N響定期公演デビューも、日本に戻って来て苦しんで一年間休んだ後に復活したのも、オペラ・デビューも、みんなここだった」と、オーチャードホールとの思い出を語る広上淳一。「音がよく響き、空間にバウンドして、客席に届く。そこに独特のものがある。舞台もの、オペラ作品にも強いホール」とは、指揮者から見たオーチャードホールの魅力だ。今回のプログラムについても、広上の助言も大きいようで、「バレエ好き、オーケストラ好き、オペラ好きが観に来て、今回のプログラムの中から多くのものを発見し、ファンとして融合されて、異なるジャンルを相互に観に行くようになればいいなと思っている」と、今後に向けた希望のほどを述べた。

 赤坂ACTシアターのこけら落とし作品として発表した「ベートーヴェン 第九」や、自身のオーチャードホール芸術監督就任記念に振り付けた「シンデレラ」など、これまでも、劇場空間の祝祭性をとらえた作品創りに卓越した手腕を発揮してきた熊川芸術監督。その総合監修による今回の記念ガラ公演にも大いに期待が高まる。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=坂野則幸]

公演概要

Bunkamura 25周年記念特別企画 「オーチャードホール25周年ガラ」

<公演日程>
2014/9/3(水)・4(木) Bunkamura オーチャードホール (東京都)

<スタッフ>
総合監修:オーチャードホール芸術監督 熊川哲也

<出演>
指揮:広上淳一
出演:熊川哲也、吉田都、森麻季、幸田浩子、錦織健、中村かおり、堀内元
   K-BALLET COMPANY/K-BALLET SCHOOL
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:二期会合唱団・藤原歌劇団合唱部

<予定曲目・演目>
●From Opera
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」より“巡礼の合唱”“歌の殿堂を讃えよう”
出演:二期会合唱団・藤原歌劇団合唱部

ヴェルディ:歌劇「リゴレット」より“頬の涙が”
出演:錦織健

ヴェルディ:歌劇「リゴレット」より“慕わしい人の名は”
出演:幸田浩子

ヴェルディ:歌劇「リゴレット」より“あなたは心の太陽”
出演:幸田浩子/錦織健

ワーグナー:歌劇「ローエングリン」より“第3幕の前奏曲”

ヴェルディ:「椿姫」より“ああ、そはかの人か”“花から花へ”
出演:森麻季

ヴェルディ:歌劇「椿姫」より“乾杯の歌”
出演:森麻季/錦織健  二期会合唱団・藤原歌劇団合唱部

●From Ballet
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」より“序曲”
振付:山本康介
出演:K-BALLET COMPANY、K-BALLET SCHOOL

ブリテン:「シンプル・シンフォニー」
振付:熊川哲也
出演:海外で活躍する若手バレエ・ダンサー

作品未定
出演:中村かおり、堀内元

ビゼー:「アルルの女」より
振付:ローラン・プティ
出演:吉田都、熊川哲也

チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」より“ラリーナ・ワルツ”
構成:熊川哲也
出演:全員

※上演順の記載ではございません。

※表記の出演者・演目・上演順は2014年5月26日現在の予定です。
出演者の怪我などのやむを得ない事情により変更になる場合があります。
最終的な出演者・演目は当日発表とさせていただきます。
一旦お求めいただきましたチケットは、公演中止の場合を除きキャンセル・公演日の振替等はお受けすることができませんので、予めご了承の上、お求め下さい。

 
2014-06-17 16:30 この記事だけ表示