2014年02月19日

舞踊評論家・鈴木晶が語る、ヤン・リーピン『孔雀』の魅力

ヤン・リーピンといえば「孔雀の舞」。彼女は「中国の至宝」「奇跡の舞」と言われるが、それが決して誇張でないことは、彼女の舞を一度でも生で観ればわかるはずだ。腕から指先までを細かく震わせる彼女を観ているうちに、孔雀の長い首に見えてくる。でも、たんなる形態模写ではない。なんとも霊感にみちた舞だ。彼女の指先は宇宙と繋がっている。

 

ヤン・リーピン 孔雀

 ヤン・リーピンはこの孔雀の舞ただひとつで中国全土にその名を轟かせたアーティストである。一見すると少数民族の伝統舞踊のようだが、実は彼女の創作である。私は10年ほど前、ヤン・リーピンの出身地である中国雲南省に行って、昆明の民族文化村で孔雀の舞を観たことがあったので、伝統舞踊だと思っていたのだが、話は逆で、リーピンの孔雀の舞がいまや伝統舞踊として踊られているのだった。  ヤン・リーピンは雲南省の白族出身だが、雲南省に数多く残る、しかし今や消えつつある伝統舞踊を収集して歩き、若者たちを集めてダンサーとして育成し、大規模な公演活動を始めた。すでに3度来日している。日本で上演された『シャングリラ』と『クラナゾ』はいずれも伝統舞踊を現代風にアレンジしたもので、大勢の若いダンサーが舞台を埋め尽くす、ダイナミックな作品だった。

今回日本にもってくる『孔雀』は、彼女の創作である。ヤン・リーピンは「自然との共棲」を強調するが、『孔雀』も春夏秋冬の四部構成で、季節の移ろいとともに物語が進行する。四季は孔雀の、そして私たち人間の一生と重なっている。春に生まれたメス孔雀が、夏に恋をするが、大カラスに邪魔され、監禁される。秋、オス孔雀は大カラスに闘いを挑み、自分を犠牲にして彼女を救う。冬、大カラスは、闘いには勝利したものの、虚無に陥る。オス孔雀を失ったメス孔雀も悲しみに暮れる。やがて神の救済が地上に訪れる。

 その季節の移ろいを、舞台美術が実によく表現している。美術と衣装は、映画『グリーン・デスティニー』でアカデミー賞最優秀美術デザイン賞を受賞したティム・イップだ。

 最大の見所は、これまでの来日公演では孔雀の舞など一部でしか観られなかったリーピンの踊りが全編にわたって観られることだ。彼女はもう50代のはずだが、その体力と美しさには圧倒される。

 もう一つの見所は、舞台の下手で、四季の移ろいと時間の経過を象徴する美少女がひとり、上演時間中ずっと(休憩の間も)回り続けること。今年15歳になったばかりのツァイー・チーだ。ヤン・リーピンの実の姪だが、その身体能力には脱帽するほかない。


[文=舞踊評論家 鈴木晶]

公演概要

ヤン・リーピン 「孔雀」

<公演日程>
2014/5/23(金)〜6/1(日) Bunkamura オーチャードホール (東京都)
2014/6/7(土)〜6/8(日) 梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)

 
2014-02-19 18:51 この記事だけ表示