2014年01月10日

1月24、25日KAAT神奈川芸術劇場にて上演されるNoism1『PLAY 2 PLAY−干渉する次元』(改訂版再演)の演出振付を手掛ける金森穣(Noism芸術監督)に意気込みを聞いた!

 Noism(ノイズム)は2004年にりゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館の劇場付き舞踊団として発足。10代で渡欧し世界的巨匠ベジャール、キリアンに師事し第一線で活躍した金森穣(当時29歳)が芸術監督に就いた。真にプロフェッショナルなカンパニーとしてダンスシーンに風穴を開け早10年――内外で精力的に活躍する。金森にNoismの10年、最新公演『PLAY 2 PLAY−干渉する次元』について話を聞いた。

 

金森穣インタビュー

■Noism10年の軌跡を振り返る

――日本で本格的な公立劇場専属舞踊団が誕生したのは画期的でした。設立の経緯は?
ヨーロッパで10年間活動後帰国し東京でフリーランスとして活動していました。出演した舞台の演出家の方が新潟で舞台を作るので振付家/出演者として出演依頼を受けました。そのとき、りゅーとぴあでは舞踊部門の芸術監督を探していた。ただ、それは、よくある肩書きだけあるいはアドヴァイザーみたいな形。そこで新潟で劇場専属舞踊団を立ち上げたいと訴えました。

――創設時まずやりたいと考えたことは?
 舞踊家に安定した生活を与えること。それから朝から晩まで鍛えたかった。欧米のカンパニーでは舞踊家たちが個性はありつつも毎日同じようなトレーニングをして同じ作品に向きあい切磋琢磨する。鍛えられた舞踊家たちと時間をかけてものを作りたかった。

――秋からのシーズン制や団員の給料制など欧米の舞踊団同様のシステムを導入しました。
 給料を決めスタジオを使うことも設定しました。でも更衣室もなくスタジオも設立時には市民の方の利用予約が入っていたから隣の音楽文化会館の床の固い所に移動したり……。最初は大変な環境でした。3年目にこんな感じだったら更新するつもりはないと主張しました。しかし、市民のなかからサポーターズと呼ばれる方が応援してくれ市に嘆願書を出し「継続させるべきだ!」と。それで行政も「続けるべきじゃないか」となった。

――10年間で達成できたと自負することは?
 Noismという集団に必要なメソッドを確立し研修生カンパニーNoism2を作った。Noism2がローカルな活動をすることで新潟市内の認知度を高め、(プロの)Noism1は国内外で世界と渡りあう。そういう体制を築き上げた。それとNoismはりゅーとぴあという劇場の事業の一つだったのですが、新潟市の文化事業へと転換し始めた。やっとスタートです。

■待望の再演!『PLAY 2 PLAY−干渉する次元』

――初期の金森作品は欧州のダンスシーンの息吹を伝え先鋭性が際立ちました。近年は演劇的で物語性もある独自の方向を追求しています。その間の2007年初演『PLAY 2 PLAY−干渉する次元』は緩急自在なダンスが刺激的で人気も高い。今回改訂再演される理由は?
 好きで大切な作品ですが機会がなかったのと当時のメンバーと大切に作った作品なので思い入れが強く容易に再演したくなかった。作品が内包する干渉する次元――人と人との関係性――を3・11という我々一人ひとりが経験した未曾有の出来事を踏まえ今再演したい。そのために自分の登場する役が必要だと思った。“想念としての他者”という役柄です。

――コンセプトは変わらない?
 変わりません。ただトン・タッ・アンの音楽も改訂され深みを増しているし“想念としての他者”が加わることによって新たな関係性が見える。現代社会において、たとえばネットひとつとっても“想念としての他者”要するに架空の他者と我々は関係性を持っている。そのことは避けられない。肉体がぶつかりあう、触れあう、支えあう、投げ出す――さまざまな関係性のうちに架空の失われた人とか、未だ出会ったことのない人とか、情報としては知っている人とか、さまざまな“想念としての他者”が我々を形成していることを加味すれば、この作品の持つ力・精神世界がより深く表現できるのではないか。

――公私のパートナー井関佐和子さん以外の出演者は入れ替わりました。
 構成は変わりませんが、そこで何をするか――役者であればどういう言語でしゃべるのか――は宛書きです。彼らがどういう動きをして、どういう関係性の上に立つかというのは、その人のためにしか作っていません。7割くらいは作り変えた。ほぼ新作です。

――2年半ぶりにご自身がNoismの舞台に立ちますね?
 佐和子含めた10人の出来事にちょっと離れた所から関係している役。自分が入ったことによって総体として作品を見ている人がいない。皆に「プロとしての自己意識が問われる」と言っています。でも今の子たちと一緒に舞台でパートナーリングをすることができたのは良かった。集中の仕方とかは言語化できないものだけれども身体からは見えるので。

――近年の井関さんは、しなやかな踊りに加えて表現に一段と凄みを増している印象です。
 以前は佐和子と同じ年代のダンサーが拮抗していたけれど今は若い子ばかり。たとえば同じように彼女の下に集まって、関わって、はけていく演出があったとしても見え方が違う。佐和子という巨塔に若い子たちが集まって絡んでいるように見える。彼女がこの6年かけて養ってきた意識・無意識が全部出ている。ソロも比にならないくらい素晴らしい。

――ご覧になるお客様、関心をお持ちの方へメッセージをお願いします。
人と人との関係性それこそ“想念としての他者”含め限られた時空のなかで展開する身体表現を通して、日常における我(われ)というもののあり方とか、人と人との関係性とか、自分にとって“想念としての他者”とは誰か?とか思いめぐらせる機会になれば。

■これからのNoism

――KAAT神奈川芸術劇場との提携により関東で『PLAY 2 PLAY』の再演が実現しました。夏には新作・劇的舞踊『カルメン』を同劇場でも披露。どのような作品ですか?
 メリメの原作から起こしたオリジナルです。演劇的な舞踊に俳優のリアルな語りが入る。「カルメン」を読んで感じたのは「すべては物語である」ということ。原作はホセとカルメンの男女の愛だけではなくて、それを学者が聞いて書いて物語として残る。最近物語に固執しています。今は全部デジタルですよね。モノとしては何も残らない。何が残るかといえば人のなかに想起される残される物語。Noismは10周年。10年間のNoismって何でしたか?といえば、人が語るものでしかない。物語として語って人が聞かせるしか舞台芸術って残らない。その本質的な部分を『カルメン』を通して表現したい。

――Noismの展望、金森さんの夢を教えていただけますか?
 マドリード公演(2013年秋)が大成功だったのでスペイン・ツアーをしたい。2015年の「水と土の芸術祭」では市長の肝いりで舞踊を前面に出すためフェスティバルもできそう。Noism2は新潟市内・県内のイベントに出て行く。(新潟市との)契約は2016年までなので、その先の展望は語らないでおきます。でも佐和子が40歳になったらNoism3(ベテラン・ダンサーのカンパニー)を作りたいし、インターナショナルなスクールも開きたい。実現させたい夢です。若いダンサー志望者のためのサマースクールもやりたいですね。

[取材・文/高橋森彦(舞踊評論家)]
[撮影/坂野則幸]

 

公演概要


Noism1『PLAY 2 PLAY―干渉する次元』(改訂版再演)

<公演日程>
2014/1/24(金)〜1/25(土) KAAT神奈川芸術劇場 ホール (神奈川県)

[演出振付]金森穣
[空間]田根剛(DORELL. GHOTMEH. TANE / ARCHITECTS)
[音楽]トン・タッ・アン
[衣裳]三原康裕 / 堂本教子
[出演]Noism1+金森穣

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2014-01-10 11:51 この記事だけ表示