2013年12月19日

2014年1月、Bunkamuraオーチャードホールにて凱旋公演を行う世界的タップダンサー熊谷和徳に意気込みをきいた!

 日本だけでなく、今や世界を代表するタップダンサーの一人として活躍を続ける熊谷和徳が、昨年11月から1年間にわたるアメリカ・ニューヨークでの留学を経て、来年1月17日から19日の3日間、Bunkamuraオーチャードホールにて凱旋公演を行う。

熊谷和徳インタビュー

 熊谷は19歳のときに渡米し、アメリカのダンス専門誌で「世界で観るべきダンサー25人」に選出されるなど、国際的な注目を浴びているダンサーだが、日本人にとってタップダンスは未だに馴染みが薄い存在で、ミュージカルで披露されるダンスという印象をもっている人も多い。しかし、その認識はここで改めなければならない。ステージで見せる情熱的なパフォーマンスとはまた違った、優しくも強い意志を感じさせる口調で、熊谷はタップダンスについて語った。

「タップダンスというのは“音を出すダンス”で、リズムで伝え合うことが元々のルーツ。それが映画とかのイメージによってビジュアル的なイメージが強くなってきて。だから、ショウに出てみんなが同じダンスを踊るっていうスタイルは、それまでの歴史にはなかったんです。それはある時代の特徴であって、それ以前はそれぞれがそれぞれの踊りで自由に表現していたんです」

 さらに、タップダンスには音楽的な制約もない。実際、これまでに熊谷は、世界的なDJとして活躍するDJ KRUSHや、ヒューマンビートボクサーAFRA、ジャズピアニストの山下洋輔や上原ひろみ、ジャズトランペッター日野皓正など、実に幅広いジャンルの著名なミュージシャンたちと共演してきている。
「僕らの世代がいま聴いている音楽は、ポップスやロックやヒップホップと様々なジャンルだとおもうんですが、元々、タップダンサーはその時代の音楽で踊ってきたんです。ジャズと踊るっていうのも、ジャズがその時代を代表するダンスミュージックだったからで。だから、僕が踊る音楽も、その時どきに出会った人たちが与えてくれるインスピレーションで変化しているんです。DJ KRUSHさんは高校生の頃から大好きで、いつか一緒にやってみたいと思ってた人だし、上原ひろみちゃん、山下洋輔さん、日野皓正さんにも憧れと共感する部分があって。彼らのようにそれぞれのジャンルで戦っている人たち、そのジャンルを背負って表現している人たちが、かなり早い段階でタップに可能性を感じて僕に声をかけてくれたんです」

 その一方で、彼はオーケストラとの共演も果たすなど、枠のない自由な活動を展開し、「タップダンスとはこうあるべき」という概念を次々と打ち壊しているようにも見えるが、それは全く逆だという。
「タップはこうあるべきっていう気持ちは人一倍強いかもしれない。タップが理解されてないということは誰よりも僕が感じてますし、悔しい思いもしてます。ニューヨークでいろんなタップダンサーを見てきて、その人達があまり評価されないでいることとか、自分が日本人としてその文化に対して何が出来るのかっていうことを常に考えさせられるんです。でも、いろんな事をやったとしても、タップの本質からブレるようなことは絶対にしたくない。それはいつも強く思う。一度、日野皓正さんとお話した時に彼が言ってくれたんです。“カズ(熊谷)には使命があるから、新しいことをやることを恐れないで。根っこがしっかりしていれば、枝葉はどんどん伸ばしていいんだよ。他の人たちのチャンスを広げていくためにもやっていくべきだよ”って。何か実験的なことにチャレンジするときに、いつも自分に言い聞かせてる言葉です」
震災をきっかけに「ダンスを踊り続けること自体に疑問を感じることもあった」という熊谷は、かつて自分が10年近くタップを学んだ場所でチャレンジしたいという欲求が抑え切れず、昨年、再びニューヨークへと向かいタップの原点に返った。そこで、自分にとって一番重要なのはタップを追求することだと改めて実感し、それまで彼のなかで燻っていた迷いがなくなったという。

 そんな彼が臨む今回の凱旋公演は、ニューヨークで知り合った腕利きのミュージシャンたちをメンバーに迎えて行われる。ジャズ・パッセンジャーズの創立メンバーでもあり、エルビス・コステロやノラ・ジョーンズなど、多くの著名なミュージシャンと共演しているビル・ウェアをはじめ、名前を挙げたらキリがないほど多数の有名ミュージシャンとの共演経験のある豪華なメンバーが揃った。さらに、熊谷の古くからの仲間であり、世界的なタップダンサーでもあるミシェル・ドーランスがゲストダンサーとして参加するのも見逃せない。

「これまであまり同ジャンルの人と一緒にやることはなかったんですけど、彼女が日本に来て一緒に踊るっていうことは、タップシーンの中ではすごく大きな出来事だと思います」

“DANCE TO THE ONE”という公演タイトルには、東日本大震災で大きな被害を受けた仙台出身の熊谷が抱く、強い想いが込められている。
「一番大切なことのために踊ろうっていう意味なんですけど、観る人それぞれにとって大切な何かを感じてもらえればいいなと。あと、ONEっていう言葉は黒人の会話の中でよく出てくるんですよ、電話を切るときに“ONE”って言ったり。“ひとつになろうぜ”みたいな意味があって。日本の状況も混沌としてますけど、そういうことも全部含めて“ONEだよな”っていうところに自分の中でたどり着いて」

 最後に、今回の公演にかける意気込みを聞かせてもらった。
「ニューヨークで生きてるミュージシャンとタップダンサーってすごいんですよね。同じことをやっても何かが違う。そんな土地で生まれてくるものとエネルギーを感じてもらえたらなって思ってます。あと、今回の会場はオーチャード・ホールで、大きいホールで見せるタップダンスというのもチャレンジではありますけど、そこでしか出来ないことってあるんですよ。その空間を最大限にひとつにするために、会場にいる人達と共鳴するようなことをしたいなと思ってます。3日間全部違う内容になると思うので、その瞬間にそこにいるという意味がかなり強いものになると思います」

[取材・文=阿刀 “DA” 大志]
[撮影=渡辺マコト]

公演概要


熊谷和徳
「DANCE TO THE ONE」〜A Tap Dancer‘s Journey〜

<公演日程>
2014/1/17(金)〜1/19(日) Bunkamura オーチャードホール (東京都)

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2013-12-19 19:39 この記事だけ表示