2013年12月03日

来日したロシオ・モリーナに2014年公演「ロシオ・モリーナ舞踊団―10年の軌跡―」に向けての意気込みを聞いた

 フラメンコ界の若き才能・ロシオ・モリーナが、2014年4月、自身の10年で生み出された作品の集大成というべき新作で、初単独来日公演を行なう。2010年には26歳の若さでスペイン舞踊界最高の栄誉「スペイン舞踊家賞」を受賞するなど、現代フラメンコ界で注目度ナンバーワンの存在だ。10月半ば、「フラメンコ・フェスティバル」の一環で来日、2011年初演作品「ダンサオーラ」を上演して喝采を浴びた彼女に、来年の公演、「ロシオ・モリーナ舞踊団―10年の軌跡―」に向けての意気込みを聞いた。

インタビュー

――「ダンサオーラ」を拝見しましたが、伝統を感じさせる一方で、光るタンバリンが小道具として登場したり、ワイングラスを踏みつぶしたりといった趣向が新鮮でした。ロシオさんを含めて舞台上に4人しか登場しないのに、タイトかつ広がりを感じさせる作品だったことも非常に印象に残りました。
 「ダンサオーラ」を日本の観客の前で踊ったことは、私自身にとってすばらしい経験となりました。観客の皆さんのフラメンコを観たいという強い欲求を感じましたし、フラメンコを愛し、尊重する気持ちも伝わってきました。終演後、ファンの皆さんとお話しする機会があったのですが、作品にこめた私のメッセージをいろいろと読み取ってくださる繊細さも感じることができました。
 私はフラメンコだけでなく、さまざまな文化の伝統を尊重しています。その一方で、自分は今という時代に生きている人間であって、過去には生きていない、ですから、過去においてはどうだったのか、真似をするのではなく、想像し、そのすばらしいところをエッセンスとして自分の作品に取り入れていくといった作品作りを心がけています。
 共演するアーティストについては、彼らの人間性を非常に重視しています。そのアーティストに心、魂が感じられるかどうかが大事だと常に感じますね。舞台上では私自身、心をこめて踊っているわけですが、そうして魂で共演者に向き合うことで、彼らからもまたすばらしいスピリットが引き出されてくると考えています。

――そもそもロシオさんがフラメンコを始めたきっかけは?
 スペインでは小さなころからダンスを習わせる家庭が多いのですが、私は母がクラシック・バレエを踊っていたということもあり、やはり小さいときからダンスの学校に通い始めました。バレエとフラメンコをほぼ同時に始めて、チュチュを着て「白鳥の湖」を踊ったこともありましたよ。そのうち、先生からどちらかを選ぶように言われ、私はフラメンコの方に何か特別なものを感じたので、フラメンコを選びました。月曜から金曜まで学校があって、土曜日曜のお休みであっても、やはり私は踊りたいと思ったのです。自分の身体がフラメンコを踊ることを欲していたんです。踊っていると幸せな気分になりました。

――ロシオさんが考えるフラメンコの魅力とは?
 フラメンコは、非常に多様な要素を含んだ、とても幅広く豊かな文化であると思います。テクニックだけではなく、踊り手がそれまで生きてきた中で味わった経験、踊り手の内側にあるものが出てくる踊りだと思うんですね。特徴としては、“コード”はあるが“ノルマ”はない、と言ったらいいかしら。“コード”とは、例えば歌い手やギタリストがこう来たら踊り手はこう返すといった、あうんの呼吸のようなものを指していて、“ノルマ”というのは、必ずこうしなければいけない決まりを指しています。こう来たらこう返す、そのコードは、踊り手、歌い手、ギタリスト、それぞれ非常にたくさんある一方で、ノルマはないので、自分自身がやりたいことを自由にできるんです。だから、しっかり振り付けされたものももちろんありますが、即興というのはフラメンコにとって非常に重要な要素ですね。

――舞台を拝見していると、ロシオさんの手と腕が、まるでそれだけで意思をもった生き物として動いているように見える瞬間がありました。
 腕の動きは自分としても非常に意識しているところではありますが、どのようになっているのか、自分自身でもよくわからないところがありますね(笑)。人間ではない別の生き物、例えば虫や鳥、それに風にそよぐ木の枝など、そういったものを感じていると出てくる動きだと自分では思っています。

――作品のインスピレーションはどこから得られるのですか。
 主に日常生活の中で気がついたこと、気をつけて観察していることなどでしょうか。もちろん、音楽や絵画にインスパイアされることもあります。日常生活の中で感じた、ちょっとしたまなざしやしぐさ、ジェスチャーなどにインスピレーションを受けることが多いです。

――そんな日常生活の中で楽しんでいる趣味やリラックス方法は?
 趣味に費やせる時間はあまりないのですが、犬と一緒に山道を散歩したりなど、自然の中にいる時間が一番好きですし、自分にとっても必要なものだと感じますね。野菜も育てていて、土にさわっているのも楽しい時間ですね。トマトやレタスやたまねぎはサラダに、じゃがいもはトルティージャ(スペインの卵料理)にするととてもおいしいですよ。

――来年4月の来日公演「ロシオ・モリーナ舞踊団―10年の軌跡―」のコンセプトを教えていただけますか。
 世界初演であり、日本だけの特別なプログラムで、これまでのキャリアの中で最高の作品になると思います。これまで発表してきた10作品の中から、好評だった場面から構成された、私の10年のキャリアを振り返る作品です。メンバーは全員で7人で、ミュージシャンが4人、男性舞踊手が2人、そして私という人数構成になりますが、共演メンバーは全員すばらしいアーティストです。「ダンサオーラ」はドラマティックで重めの雰囲気の作品でしたが、今度の作品はさまざまな作品からエッセンスを取り入れるので、ドラマティックなシーンあり、美しく詩的なシーンあり、ヴィジュアル的にも映像を使用したりと、さまざまな感情を味わえる、非常にヴァリエーションに富んだ色彩豊かな舞台になると思います。フラメンコのファンの方、舞台芸術を愛する方々に観ていただきたいのはもちろんのこと、フラメンコが初めてという方にもその楽しさを知っていただける作品になるんじゃないかしら。ぜひ劇場に足を運んでいただき、皆様と感情と感動を分かち合えたらと願っています。


[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]


公演概要

ロシオ・モリーナ舞踊団――10年の軌跡――

<公演日程>
2014/4/18(金)・19(土) Bunkamura オーチャードホール (東京都)
公式サイトはこちら

2013-12-03 12:09 この記事だけ表示