2013年05月24日

『シレンシオ』作・演出の小野寺修二、バレエ・ダンサー首藤康之、女優 原田知世にインタビュー!

  マイムをベースに、身体表現の可能性を探る舞台を創作、また名だたる演出家の作品において振付やステージングを手がけるなど多角的に活動中の小野寺修二。バレエ・ダンサー首藤康之と初めて組んだ「空白に落ちた男」(2008年)は話題を呼び、2010年にも再演されるなど好評を博した。このたび、女優の原田知世も新たに参加し、“沈黙・静寂”を意味する「シレンシオ」なる作品が上演される。三人に話を聞いた。

インタビュー!

首藤  僕はその前から、小野寺さんが所属されていた「水と油」の公演を拝見していて、バレエと同じく言葉を使わない表現とはいえ、非常に新しいものを感じたんです。それでぜひ一緒に創作してみたいと思って実現したのが「空白に落ちた男」だったんです。そのとき感じたのは、小野寺さんの舞台には、心地のよい表現の中に、絶対的な芯のようなものがあるということ。稽古段階での非常に細かい作業を通じて、より強い芯ができあがっていくということを実感しました。例えば、1から10まで柱を立てていくとして、1、2、3と立てていくのと、1、1.1、1.11と立てていくのとではまったく違いますよね。一つのものを360度少しずつ視点を変えて見ていくような細かさがあって、そのことによって、一見不条理な中にも、真実というか、人間にとっての絶対的なもの、例えば愛や死といったものが追求されている。その上でポップに見せていっているというところを感じました。

小野寺  「空白に落ちた男」は、僕にとってターニングポイントになった舞台でしたね。ずっと同じメンバーで作っていたのが、「空白に落ちた男」で初めてマイム以外の方と舞台を作ることになった。その初めての方が首藤さんで本当によかったなと思っているんです。これをやってみようとか、こうしてみようとか、いろいろと試していったそのときの経験が、その後の一つの指針になっている感じで。細かさについていえば、自分ではそんなに細かく作っているつもりはなくて、結果として細かくなっているというか(笑)。例えば、歩いてきて立ち止まるとき、単純に止まり方によっていろんな意味合いがにじむと思うんです。首藤さんはバレエの美しさでもってぱっと足を揃えていたのですが、日常ではそうやってキメないですよねと指摘したら、首藤さんがそれを何度も何度も繰り返し稽古していて。

首藤  いや、慣れないうちはすごく難しかったんですよね。


――それが例えばバレエとの表現の違いだったりするのでしょうか。
首藤  バレエの形としてはやはりそこでぴしっとキメというのはありますよね。

小野寺  確かに、表現の違いといってしまっても良いんですが、ただ、日本の場合、ダンスとかマイムとか演劇とか、いろいろカテゴリー分けされていて、ダンス畑の人は演劇の舞台を観に来ないとか、演劇の人はダンスの舞台を観に来ないとか、そういうことがありますよね。僕が首藤さんをはじめ、役者の方々であるとか、いろいろなフィールドの人たちと舞台を作ってきて感じたのは、バレエはこうとか、マイムはこうとか、形はもちろんあるけれども、守っても良いし壊しても良いんじゃないかなと。同じ舞台で生身の身体をさらしてやる以上、形を越える瞬間があるというか、最終的に強いものはもしかして一緒なのかなということを感じられるようになったことは非常に大きいと思っていて。

首藤  例えば、バレエの場合は身体を引き上げるとかって言いますけれども、引き上げるためには下をぐっと下げておかないといけない。もちろん、バレエの場合のようにターンアウトして足を開くとかそういうことは他ではないかもしれないにせよ、そう考えていくと、バレエでも、それ以外でも、舞台に立つ上での身体の使い方はむしろ同じなのかなと僕も感じますね。でも、小野寺さんの舞台では、やっぱりいつもとは違うところを使っているみたいで、筋肉痛になったりしますが(笑)。


――原田さんが今回、小野寺さんの舞台に出演されたいと思った理由は?
原田  舞台はずっとやっていなくて、もっぱら観る側だったので、自分がやるには勇気がいるなと思っていたんです。それが、お二人の「空白に落ちた男」を観たとき、こういう表現もあるんだと、ものすごく引き込まれてしまって、まばたきするのも忘れてしまうくらいで。それで、自分もぜひ挑戦してみたいと思ったんです。首藤さんのダンスの舞台も拝見していますが、舞台に立つ首藤さんは本当に美しくて、一瞬でその場の空気を変えることのできるオーラを持っている方だと思います。


――小野寺さんのベースであるマイムの基本はそもそもどのようなところにあるのでしょうか。
小野寺  エチエンヌ・ドゥクルーという、パントマイムで世界的に有名なマルセル・マルソーの師匠が言った、「そこにないコップを出そうとするのがパントマイムで、そのコップを持っている人に着目するのがマイムだ」という考えが僕は好きなんですね。パントマイムというと、見えない壁があるように見せるとか、見えない綱をたぐり寄せるとか、そういうイメージがあると思うんですが、それはあくまでパントマイムのテクニック。その一方で、マイムは人を表す。そういう意味ではジェスチャーと表裏一体ののようで、決してそこにとどまるものではないんです。


――作品のワークショップの雰囲気はいかがですか。
原田  始まる前は緊張していたのですが、ワークショップに入ったら、そういう緊張は必要ないんだな、今を楽しんでやればいいんだなと思えました。初めの日は4時間くらいやっていたのですが、時を忘れるくらい夢中になっていて。舞台なので、全身を使って見せることが必要になってきますが、例えば、一つ一つの骨の動きであるとか、小野寺さんがものすごく細かくていねいに教えてくださるんです。

首藤  僕は小野寺さんのやり方には「空白に落ちた男」と「ジキル&ハイド」ですでに経験していますが、今回初めて経験される方は、こうやって自分とは違うアプローチをされていくんだなと、見ていてそれも発見につながりますね。それにしても知世さんは全然違和感がなくて、すっと入っていっている感じがして。

原田  ワークショップで、肩にかけていたバッグを下におくという動作をやったとき、いつものようにおいたら、そこに自分のくせを発見されて。それだけでまたキャラクターが生まれてくるような感じがしたんです。そういう小さなところをいっぱい発見して積み重ねていくことで、この舞台を経た自分の演技も変わっていくんじゃないかという気がしますね。

小野寺  今回、稽古期間も長く取っていて、最初のワークショップを通じて、メンバーがどんなところに興味があるのか、そして全員の身体的共通言語を見つけていっている感じです。作品の具体的な中身についてはこれから組み立てていくのですが、イメージとして繋がりはあるにせよ、何らかの物語を各々が背負っている感じではないなと思っています。セリフのある舞台も作ってきましたが、今回言葉は出てこない予定です。

原田  自分としても、セリフがないこともまったく違和感がないですね。映画やドラマをやっていても、自分が話す演技より、相手の話を聞いているとか、間のお芝居の方がすごく難しいし、大切だなと思っていて。

小野寺  舞台は映像に比べ、そういう間をしゃべって、あるいは動いて埋めようとする傾向があるように思ったりします。動かない瞬間とか、間が空くことを恐れるというか。今回の作品のタイトルは「シレンシオ」で、沈黙、静けさを意味しますが、そういう静けさって実はスリリングだと僕は感じていて。


首藤  ダンスにおいては、完全に止まってしまうということは通常はありえないんです。でも、小野寺さんとの仕事を通じて、止まることへの違和感や恐れがなくなったなと思っていて。昔、モーリス・ベジャールさんの「M」という作品で聖セバスチャンを踊ったとき、ベジャールさんに、「完全に停止して。でも躍動して」と言われたことがあって。そのときは意味がわからなかった。後々になって、身体は一ミリも動かないでストップするけれども、精神的には動いているということなんだなって、自分の中で理解できたというか。

小野寺  日常においても、そうやって相反する二つのことが成立している瞬間っていっぱいあるわけで、舞台におけるリアリティも、例えば俯瞰しながら集中するとか、そうやって二つを同時に成立させて、裏側まで見せられると、エネルギーというか、観る側に強いものを感じさせるのかなと思いますね。

原田  皆さんともお話していたのですが、今回、お子さんにもたくさん観に来てほしいなと思っているんです。「空白に落ちた男」を観たとき、大人の自分でももう最初からすっかり引き込まれて、言葉では説明できないほど感動してしまって。今回の舞台も、言葉じゃない、理屈じゃない、それでも伝わってくるもの、感じられるものの多い舞台になるのではないかと思いますので、お子さん達にぜひ観てもらいたいですね。新たな挑戦をして、自分についても新しく発見していける場はなかなか少ないですし、今回、こうして参加させていただけることを、幸せに感じています。


[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[インタビュー写真=坂野則幸]
[原田知世さん衣裳=FOR flowers of romance & la fleur]

 

公演概要

『シレンシオ』

<公演日程>
2013/7/2(火)〜7/7(日) 東京芸術劇場 プレイハウス (東京都)
2013/7/13(土) サンケイホールブリーゼ (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
作・演出:小野寺修二
出演:原田知世 梶原暁子 川合ロン 藤田桃子 小野寺修二 首藤康之



2013-05-24 14:20 この記事だけ表示